法律問題は相談LINEで解決!

HOME > 法律コラム > 暴力団根絶へ一気に加速か?組長逮捕&暴力団マネー回収の可能性もある上納金への課税とは?

このエントリーをはてなブックマークに追加

暴力団根絶へ一気に加速か?組長逮捕&暴力団マネー回収の可能性もある上納金への課税とは?

専門的な話になりますが、税法の勉強の中で必ず指摘される論点の一つに、「詐欺や盗難など、違法な行為によって儲かったお金についても、税金はかかる」という考えがあります。お金を稼いだ人が税金を納めることになるため、このような犯罪行為を基にお金を儲けたとしても、税金は課税されることになります。

何より、このようなお金に税金をかけないとなると、犯罪行為を行ったほうが税金が優遇される、という結論になるわけで、課税の公平という考え方からも、至極当然の話と言われます。

どうして暴力団への課税漏れが起こる?!

この考え方は税の専門家にとっては常識であるところ、前回も指摘しましたとおり、暴力団に対する課税もれが生じているという現実はどうにも納得しがたいところです。法律上、会費が原則非課税になる人格のない社団等に暴力団が該当するため、と説明を受けても、それを許す制度などあってはならないはずです。

こういうわけで、このような課税制度を問題にせず、法律を作る政治家が放置してきたとすれば、正気の沙汰とは思えないと考えています。

十分に機能していない暴力団への税務調査

この点、税務署は暴力団関係者に対しても、税務調査を実施しています。私が聞いたところだと、税務署によっては、このような団体を調査する専門部署もあるようです。

ただし、税務調査は納税者の協力の基に行う任意調査であるところ、自ずと限界があることは否定できません。加えて、税務署の職員は単なる公務員であることが多いですから、租税正義より保身を優先させざるを得ないため、正気の沙汰とは思えない事態が結果として容認されてきた、と考えられます。

組長の個人所得として課税

このような事情がありますので、福岡の暴力団に対する課税事件は、画期的なものと指摘されています。暴力団に対して課税してしまうと、人格のない社団等として逃げられるため、上納金は暴力団が儲けたお金ではなく、組長個人が儲けたお金、として課税した模様です。

ただし、組長個人が儲けたお金とするのであれば、税務署は暴力団の資金ではなく、組長個人が自由に使えるお金であることを、正確に立証しなければなりません。このような立証は非常に難しく、言い逃れされる可能性もある、と考えられます。

わざわざこんな面倒なことを行わなければ正しいことができない、というのも、日本の税制のおかしなところなのです。

執筆  松嶋洋 WEBサイト
平成14年東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。国税局を退官後、経団連関連の税制研究所において、法人税制を中心とするあるべき税制の立案と解釈研究に従事。現在は、税務調査対策及び高度税務に関するコンサルティング業務に従事するとともに、税理士向けに税務調査・法令解釈のノウハウにつき講演執筆活動を行う。

社長、その領収書は経費で落とせます!
社長、その領収書は経費で落とせます!
詳しくはこちら