法律問題は相談LINEで解決!

HOME > 法律コラム > 「取り敢えず期限内申告」に潜む税理士法違反の疑いを元国税が解説

このエントリーをはてなブックマークに追加

「取り敢えず期限内申告」に潜む税理士法違反の疑いを元国税が解説

前回、無申告加算税を削減するノウハウとして、適当でもいいので、取り敢えずの期限内申告をしてみることを推奨する専門家がいると申しました。このような申告について、国税はあまり問題にしないので大丈夫などと言っていますが、法令上実は税理士法違反の疑いがあります。

税理士法違反の疑いが残る根拠

具体的に申し上げると、税理士法では故意に事実と異なる税務書類を作成してはいけないとされています(税理士法45条)。取り敢えずの期限内申告は、あくまでも仮の申告ですから、一年間の実績に基づく申告ではありません。このため、先の税理士法に照らせば、このような申告は事実に基づかないことを知りながら行う、事実と異なる申告となります。このような申告は、税理士法の違反になります。

さらに確定決算基準にも違反

加えて、法人税の申告は確定した決算に基づいて行う必要があるとされています。取り敢えずの期限内申告は決算以前に行う場合が多いものですから、決算に基づいた申告などできず、それだけで違法になります。

実際のところ、このようなケースについて、税理士法による懲戒事例を受けた税理士もいるようです。具体的に申し上げると、その税理士は顧客企業の協力が得られずに決算を組めなかったため、期限に間に合わないことから、やむを得ず多めの税額で期限内申告をしたようですが、それでは決算を踏まえていない、法人税法に違反した申告であるとして懲戒処分を受けたようです。

そもそも脱法行為であることを理解するべき

以上を踏まえると、取り敢えずの期限内申告は脱法申告であることがよく理解できると思います。にもかかわらず、大した知識もないくせに、取り敢えずの期限内申告をして無申告加算税を削減しようなどと声高に力説する税務調査の専門家がいるため困ります。

税理士の実務上、資料を持ってくることが遅い顧客も多いことから、このようなケースについて取り敢えずの期限内申告をして無申告加算税を削減しよう、などという訳ですが、その結果として税理士法の懲戒処分を受けてしまえば、顧客の信頼はもとより事業の継続もできないことになりますので、このような専門家の意見に騙されてはいけません。

専門家プロフィール

元国税調査官の税理士 松嶋洋
東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。現在は118ページにも及ぶ税務調査対策術を無料で公開し、税理士を対象としたコンサルティング業を展開。

税務署なんて怖くない
税務署なんて怖くない
詳しくはこちら