近年の税務調査では、用意する資料として、税務署に提出した申告書の控えのコピーも必要になると国税から指導されます。すでに提出しているにもかかわらず、何故コピーを用意しなければならないかと言えば、現状税務署において申告書の持ち出しが全面的に禁止されているからです。
私の現職時代から問題視されていたことですが、申告書を税務調査で持参した調査官が、酒に酔ったり居眠りをしたりして、申告書を紛失する事件が続発していました。その都度、幹部職員から厳重注意がなされていたわけですが、一向に改められないので、全面的に持ち出しを禁止した模様です。
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売掛先の倒産などにより、会社の債権の回収が困難になり、場合によっては貸倒損失を検討することがありますが、この貸倒損失について、法人税は非常に厳しいです。わずかでも回収可能性があると判断できる場合には原則としてそれを経費として認めないとされているわけで、ほとんど回収できないのに経費にならない、というジレンマがあります。
このため、実務上貸倒損失を計上する場合には、債務免除を行うことがほとんどです。回収可能性がある場合に債務免除をすれば問題になる可能性はあるものの、債務免除により債権は法的に消滅していますので、認められる可能性は通常の場合よりも大きいと言われています。
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調査官の無礼な発言など、問題がある税務調査がなされることは少なくありません。この場合、不適切な行為については、国税組織に当然に抗議するべきですが、謝罪があるまで税務調査を受けない、といった交渉は絶対にやってはいけません。あくまでも税務調査には協力するが、調査官の態度を改めるよう上司から指導することを求める、といったクレームを言うにとどめなければなりません。
このあたり、中々イメージできないかもしれませんが、実は国税組織としては非常にクレームに敏感であり、国税に非がある場合には、調査官の直属の上司である統括官は真摯に謝ることが多いです。ただし、統括官の上司に当たる署長や副署長は、絶対に頭を下げません。
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従業員の健康管理を重視する「健康経営」を取り入れる企業が増加している。中でもロート製薬は、4月3日に2020年に向けて、健康経営の目標値を設定するという取り組みを発表した。具体的には生活習慣病予防や、女性特有の低体重や貧血に関連した目標値などがあった。その他、残業時間や有給取得率なども盛り込み、ライフワークバランスに関しても評価していくという。さてそんな中でローソンは、2013年度から健康診断を受けない社員とその上司の賞与を減額するという一風変わった制度を導入している。導入したキッカケは、当時の最高経営責任者だった新浪剛史氏が、立て続けに従業員の葬儀に参列し、遺族の境遇に触れたことだという。仕事を続けられなくなる社員を減らすためだというが、健康診断を受けないことで何かのペナルティを課すことは法律上問題ないのだろうか。清水陽平弁護士に伺った。
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消費税は、原則として一事業年度において預かった消費税(売上に対して課される消費税など)の合計額から、支払った際に課される消費税(商品仕入れなどの際、本体価格に上乗せで請求される消費税など)の合計額を減算して計算します。ここでいう、支払った消費税を減算する仕組みを仕入税額控除といいます。
仕入税額控除については、その支払いに係る請求書及び帳簿を保存し、それを税務調査で提示できるようにしておかなければ適用が認められないという制度があります。このため、例えば帳簿を破棄しているような悪質な納税者については、仕入税額控除が認められず、預かっている消費税の全額を納税しなければなりません。
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平成29年度改正においては、配偶者控除及び配偶者特別控除の見直しがなされています。これらの所得控除については、報道による限り、夫婦控除の創設など抜本的な改革がなされると言われていましたが、ふたを開けると、抜本改革ではなく、適用のハードルを高めるなど、現在の枠組みに基づいた改正にとどまっています。結果として、制度が複雑になったというデメリットだけが残る内容になっており、改正の方向性として大いに疑問が残ります。
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相続税の対象になる財産は、相続により取得した財産になりますが、被相続人及び相続人が相続開始前5年超海外に住所があれば、日本にある財産についてのみ課税されます。この取扱いは贈与税も同様であり、贈与前5年超海外に住所があれば、贈与した財産の内国外にあるものは、贈与税が課税されません。
このため、多額の財産を持つ富裕層の中には、早いうちからシンガポールなどの海外に移住し、5年たった後国外財産を贈与するという節税を行っている者が非常に多くいると言われています。なお、シンガポールでは贈与税の課税はありませんから、結果として贈与税の課税なく国外財産を贈与することが可能になります。
この5年ルールについて、平成29年度改正においては見直しがなされ、5年ではなく10年超海外に住所がなければ、国外財産が非課税にならないことにされました。この改正は、平成29年4月1日以後の贈与等に適用されます。
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現在、大学では入学式のラッシュを迎えている。当事者である新入生は何かと慌ただしいかと思うが、しばらくすればその生活にも慣れ、次第にアルバイトを探し始める人も出てくるだろう。そこで今回は大学生に大人気のアルバイト「塾講師の給料」について取り上げる。
塾講師は、いわゆる時間給ではなくコマ給と呼ばれる、授業一コマに対して給料を支払うというのが一般的だ。しかし授業をするためには、それなりの準備が必要である。しかし多くの塾ではその準備のための給料を払っておらず、これが度々ニュースになることもある。決められた時間以外の労働には残業代が支給されることが一般的であるが、塾講師のアルバイトも同様だろうか。話を伺ったのは木川雅博弁護士です。
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法人税の特例として、取得価額の一定割合を一括で経費とすることができる特別償却という制度が設けられています。代表例としては、中小企業が所定の機械装置等を購入した場合に適用される中小企業投資促進税制で、この制度の対象になる場合、通常の減価償却と別枠で、取得価額の30%を一時に経費とすることができます。特別償却については、法人税の節税につながるだけでなく、株価評価を引き下げる効果もあります。
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平成29年度の税制改正において、非常に重要な改正事項の一つに、類似業種比準方式の改正があります。非上場株式を評価する場合、規模の大きな会社の計算はこの方法によりますが、その計算上、会社の配当金、会社の利益、そして会社の純資産という3つの要素が影響します。従来は、この3つの要素について、以下の比率で評価することとされていました。ご覧いただくとわかる通り、利益の比率は他の要素の3倍ですから、利益を減らすことで大きく評価額を減らすことができたわけです。
配当金:利益:純資産=1:3:1
しかし、平成29年度改正においては、以下の比率となりますので、利益を減らしてもそれほど影響はなく、むしろ配当金や純資産が株価に与える影響が大きくなっていますので注意が必要です。
配当金:利益:純資産=1:1:1
困ったことに、この改正は平成29年1月1日からすでに適用されています。
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前回も申し上げましたが、相続税の申告義務は、相続財産の総額が相続税の基礎控除を超える場合に発生します。ここで誤解が多いのは、相続税を計算した結果、相続税が産出されず納税額が出ない場合にも、申告義務がないと勘違いすることです。
相続税には、配偶者が取得する財産が法定相続分(1億6千万円に満たない場合には1億6千万円)までであれば税金がかからない配偶者の税額軽減や、居住を継続する宅地などについて評価額を大きく減額する小規模宅地の特例などの減額措置があります。これらの減額措置を使うことで、結果として納税額が出ない場合がありますが、これらの特例は申告して初めて適用されることになりますので、申告がない場合には適用を受けることができません。つまり、特例的な措置を使った結果として納税額が出ない場合には、申告が必要になるのです。
いずれにしても、これらの特例を使う場合には、確実に申告が必要になります。
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平成27年1月1日から、相続税の課税最低限である基礎控除が6割に縮減するなどした大増税の関係で、相続税の申告をしなければならない方が非常に増えています。この点、国税も非常に神経を使っているようで、相続があった方に対しては、申告の必要があるかどうか、国税から相続税のお尋ねが相続開始から数カ月たって広く発送されています。
このお尋ねを見て、相続税の申告の必要を把握される方も多いですが、このようなお尋ねの発送先を国税がどのように把握しているかご存知でしょうか。
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平成に24年度に厚生労働省のワーキンググループが定義して以来、わずか5年ですっかり定着してしまった「パワハラ」。そのおかげもあってか、パワハラがどんな行為に該当するか理解できている人は多いだろう。しかしもしもそれが自分が被害者となった場合でも冷静に判断できるだろうか。ちなみにパワハラは「身体的な攻撃」、「精神的な攻撃」、「人間関係からの切り離し」、「過大な要求」、「過小な要求」、「個の侵害」の6つに分類されるが、この中で身体的・精神的な攻撃は非常に分かり易い。しかし、過大な要求や過小な要求となると、上司と部下という関係を考えると、教育や研修と混同してしまう可能性も否定できない。そこで今回は、もしもパワハラを受けているかもしれないと感じた場合に、どこに相談するべきか清水洋平弁護士に伺った。
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不正取引に該当する場合に課される重加算税は、実は簡単にそれを免れることができます。その方法は、このコラムでも申し上げている通り、税務調査が入る前に、修正申告をする(自主修正)です。
自主修正をすると重加算税が免れる理由ですが、重加算税は不正以外のペナルティーである過少申告加算税に代えて課税されると法律で定められているからです。過少申告加算税は、自主修正をすれば原則免除されますので、過少申告加算税が課税されない以上、重加算税も課税されない、という結論になります。
ただし、従来は税務調査をするという国税からの予告があってからでも間に合いましたが、平成29年1月以降に申告期限が到来する税金については、制限が設けられていますので注意してください。
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税務調査で売上除外などの不正取引が見つかった場合、本来納付すべき税金に加えて、不正取引に対するペナルティーとして、35%ないし40%の重加算税が課税されます。この重加算税ですが、一般的には不正取引に対して課税されるとされているものの、法律的には「事実の隠ぺい又は仮装」に対して課税されるとされています。
少し専門的ですが、税金の計算上、不正取引とは「偽りその他不正の行為」とされています。文言を見ていただくとわかる通り、重加算税の要件と不正取引の要件は正確には異なっています。
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あまり知られていない節税として、確定拠出年金制度の利用があります。この制度は、国や企業が運用に責任を持つ公的年金や企業年金などの年金制度と異なり、加入者自身が資産を運用する年金制度をいいます。加入者自身が運用するため、将来支給される年金額は運用成績で異なります。
いわば、自己責任で運用する退職年金制度ですので、デメリットも大きいですが、それを補うだけの節税効果もありますので、検討すべき制度です。
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平成29年から、クレジットカードによる国税の納税ができるようになりました。対象となる税目は、所得税や贈与税など個人に関する税金だけではなく、法人税など会社の税金についても納付できます。
クレジットカード納税については、夜間休日問わず、24時間納税できるというメリットや、クレジットカード会社の会員規約によっては、カードに係るポイントも付与されますので、利用を考えたい制度です。その概要ですが、以下の通りとされています。
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人工知能によって取って代わる可能性が高いと言われている弁護士。そしてその中でも特に可能性が高い分野は「過払い金返還請求」と「交通事故」である。
例えば過払い金返還請求は、既に過払い金計算機のようなものがネット上に存在している。そこでは幾つかの情報を入力すれば、自動的に幾らの過払い金が発生しているか教えてくれる。勿論、訴訟にまで発展する場合は、弁護士が必要になるかもしれないが、少なくとも過払い金があるかどうかを調べるだけならば弁護士は必要ない。
また交通事故は過去の判例を元に、損害額の算定はある程度決まってしまう。勿論、個別の事情によって多少の違いはあるが、それでもその損害額が大きく逸脱することは殆ど無い。つまり交通事故も、過払い金返還請求同様に、弁護士が介入する余地が非常に少ないのだ。そこで今回は、過去の判例で損害額が決まるならば、交通事故において弁護士に何が求められているのかを井上義之弁護士に伺った。
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関係会社との取引に多いですが、債務超過の関係会社に対する貸付金などについて、回収の見込みがないことから債務免除を行う、ということがあります。この債務免除ですが、債務という負担を軽減されたという利益がありますので、その債務免除益に対しては、収益として法人税の対象になります。
問題になるのは、債務免除益について、いつ収益として計上するかということです。債務免除益についても収益には変わりませんので、大原則である権利確定主義に従って計上すべき時期を決定することになります。
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