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実務上、相続税対策の一環として、親から子にアパートやマンションなど、不動産投資をしている物件を贈与することがあります。相続財産を減らしたり、不動産投資の収益を子に渡すことで納税資金を作ったりする目的でこのような贈与を行うわけですが、注意しておきたいのはその投資物件に係る敷金です。
アパートやマンションを賃貸する場合、賃借人から敷金を預かりますが、この敷金は将来賃借人に返すべきものですから、負債となります。この敷金を返済する義務については、賃貸している建物の所有者が変わる場合、建物の新所有者に当然に移転するとされています。つまり、親から子にアパートを贈与すれば、親が賃借人に返還すべき敷金についても、同時に子に移転することになります。

個人が土地や建物を売った場合、多額の譲渡所得が課税されますが、この場合の特例措置として、土地や建物などを交換したり、事業用資産を売却した譲渡代金で、その事業用資産の代替資産を購入したりした場合、一定の要件を満たす取引であれば、譲渡所得の課税の特例が受けられます。詳細は、こちらこちらをご参照下さい。
ここにもある通り、これらの特例を使うことで譲渡所得を圧縮することができ、節税することができます。要件は厳しいですが、有効な節税策になり得ますので、専門家と相談しながら積極的な利用を考えるべき制度と言われます。

相続税の節税の王道に、養子の活用があることはよく知られています。養子の数に制限はありますが(注:実子が居ればひとりまで、実子がいなければ二人まで)、養子を増やすことで相続税の基礎控除を増やしたり、保険金の非課税金額を増額させたりすることができます。このため、例えば娘の配偶者を養子にするなどして相続税対策をする納税者は多くいます。
この養子の節税について、先日注目すべき最高裁判決が出ています。節税目的で養子にすることが、無効と言えるのかどうかが問題になった事件です。

純金の仏像を買うと、相続税の節税につながる。こんな話を耳にされた方も多いと思います。この理由は、相続税が課税されない財産として、「墓所、霊びょう及び祭具並びにこれらに準ずるもの」が挙げられていることがあります。このような財産の一つとして、仏像が挙げられることから、純金であっても相続税の対象にはならず、結果として現金で持つよりも節税になる、と解説されています。

相続税の対象になる財産は、相続により取得した財産になりますが、被相続人及び相続人が相続開始前5年超海外に住所があれば、日本にある財産についてのみ課税されます。この取扱いは贈与税も同様であり、贈与前5年超海外に住所があれば、贈与した財産の内国外にあるものは、贈与税が課税されません。
このため、多額の財産を持つ富裕層の中には、早いうちからシンガポールなどの海外に移住し、5年たった後国外財産を贈与するという節税を行っている者が非常に多くいると言われています。なお、シンガポールでは贈与税の課税はありませんから、結果として贈与税の課税なく国外財産を贈与することが可能になります。
この5年ルールについて、平成29年度改正においては見直しがなされ、5年ではなく10年超海外に住所がなければ、国外財産が非課税にならないことにされました。この改正は、平成29年4月1日以後の贈与等に適用されます。

前回も申し上げましたが、相続税の申告義務は、相続財産の総額が相続税の基礎控除を超える場合に発生します。ここで誤解が多いのは、相続税を計算した結果、相続税が産出されず納税額が出ない場合にも、申告義務がないと勘違いすることです。
相続税には、配偶者が取得する財産が法定相続分(1億6千万円に満たない場合には1億6千万円)までであれば税金がかからない配偶者の税額軽減や、居住を継続する宅地などについて評価額を大きく減額する小規模宅地の特例などの減額措置があります。これらの減額措置を使うことで、結果として納税額が出ない場合がありますが、これらの特例は申告して初めて適用されることになりますので、申告がない場合には適用を受けることができません。つまり、特例的な措置を使った結果として納税額が出ない場合には、申告が必要になるのです。
いずれにしても、これらの特例を使う場合には、確実に申告が必要になります。

平成27年1月1日から、相続税の課税最低限である基礎控除が6割に縮減するなどした大増税の関係で、相続税の申告をしなければならない方が非常に増えています。この点、国税も非常に神経を使っているようで、相続があった方に対しては、申告の必要があるかどうか、国税から相続税のお尋ねが相続開始から数カ月たって広く発送されています。
このお尋ねを見て、相続税の申告の必要を把握される方も多いですが、このようなお尋ねの発送先を国税がどのように把握しているかご存知でしょうか。

平成28年度改正により、空き家問題の解決のため、所定の空き家を譲渡した場合には、居住用財産の特別控除と同様に、3000万円の控除が受けられることになりました。居住用財産の特別控除は、譲渡する者が実際に居住の用に供している物件が対象になりますが、この制度は、実際に譲渡する者が居住している必要はなく、相続などで取得した物件が対象になります。この控除は、居住用財産の特別控除と併用することも可能です。詳細はこちら(PDF)をご参照下さい。

日本の大きな問題の一つに、空き家問題があります。少子高齢化によって実家を引き継ぐ子供が減少した結果、地方にある実家が誰も管理しない空き家になってしまう、という問題が近年多数発生しています。空き家が増えれば、その分環境問題や犯罪の温床になる可能性も指摘できるわけで、早急に解決しなければならない問題と言えます。
この問題について、腰の重い政府も対策を講じており、所定の空き家について、固定資産税の大幅増税がスタートしています。

オーナー企業では、オーナーの持つ自社の株式の株価が大きくなりすぎたため、後継者に贈与や相続で承継してしまうと、恐ろしい税金がかかるため、株式の承継ができないという問題が生じる可能性があります。この問題の解決のため、銀行がよく提案し、かつ実例も最も多い手法が持株会社スキームです。

相続税の節税において、大きな役割を果たすのが小規模宅地等の特例という制度です。被相続人の居住の用や事業の用に供している宅地を、一定の相続人が承継した場合、その宅地の評価額を最大80%減額させることができますので、非常に有用な制度です。

実務上、非常に問題になる税務問題の一つに、非上場株式の譲渡時価の算定があります。客観的な時価がわかる上場株式とは異なり、ほとんど取引されない非上場株式の時価はわかりません。しかし、時価で譲渡しないと法人税や所得税の課税問題が生じますので、どのように評価するべきかが問題になります。
この時価については、法人税や所得税の通達に規定があり、相続税評価額を計算する財産評価基本通達を前提に、一定の調整をすることで計算すれば原則問題にしないと書かれてあります。

相続税の計算を行う場合、相続財産を評価する必要があります。この評価は法律上、相続があった時点の時価とするとされていますが、実務上は国税庁が決めている財産評価基本通達という通達に基づいて計算します。
この通達に基づいて計算される金額ですが、その金額はあくまでも相続税の計算における時価であることに注意する必要があります。相続税以外にも、法人税や所得税で時価が問題になることがありますが、この場合の時価を相続税評価額として申告すると、認められない可能性があります。

相続税の申告では、土地の時価が問題になり、この金額は原則として財産評価基本通達という国税庁のルールで計算することになっています。このルールを基に、路線価方式などで計算することになるわけですが、この点よく問題になるのが土地を相続した後、すぐに売却した場合の取扱いです。
一般的に、相続税における土地の時価とは、客観的な交換価値と言われます。このため、利害関係にない第三者間で決まった金額であれば、一般的には時価と認められますので、路線価方式等によらずとも、相続後に成立した売買代金で評価しても問題ないと考えられます。

相続税の申告で、問題になることの一つに、相続前後に土地の売買契約を結んでいたが、まだ買主に引き渡していない場合の土地の取扱いがあります。相続税の計算上、土地の評価は路線価方式などで評価していますが、相続直前に土地を売る契約をしていた被相続人について、路線価方式などで評価できるかが問題になります。土地の値段は当事者の交渉によって変わりますから、路線価方式など国税が決めた評価方法で計算される金額と異なることが通例だからです。

加えて、土地を売ることが相続前に決まっていた場合、その土地は売り渡さなければなりませんから、被相続人が土地を持っているとまでは言えず、相続税の課税上、土地を相続財産に含めていいかどうかも問題になります。

被相続人と同居していた親族が、被相続人が居住の用に供していた宅地を相続して住み続けた場合、原則として小規模宅地の特例の対象になり、80%減額の対象になります。この同居について、従来その判断が難しかったのは二世帯住宅です。
親の土地の上に二世帯住宅を建てて、一階が親世帯、二階が子世帯という二世帯住宅を作ることがありますが、この場合親と子が同居していると言えるのか、問題になります。従来は、建物の内部に階段があるなどして、内部で行き来ができれば同居、などと言っていましたが、判断が難しいこともあって、平成26年の相続からは、二世帯住宅であっても、原則として同居しているとして取り扱われることになりました。このため、小規模宅地の特例が広く使えるようになっています。

以前、本コラムでも指摘しましたが、相続対策は二次相続まで考える必要があります。被相続人(父)がなくなった場合、配偶者(母)が相続する財産を増やせば配偶者の税額軽減を使うことで被相続人(父)の相続税を減らすことができますが、今度は配偶者(母)の財産が増えますので、配偶者(母)の相続(二次相続)における相続税の負担が大きくなります。
こうならないよう、二次相続まで含めて考える必要があるのですが、その際知っておきたい制度として、小規模宅地を一次相続と二次相続でダブル適用する、というやり方があります。

相続の結果、遺産分割でもめることがよくありますが、この場合に問題になるのが未分割の不動産賃料に関する所得税の申告です。所得税は暦年ごとに計算されますが、被相続人がアパートを経営しており、そのアパートが12月31日までに分割されていなかった場合、被相続人の死亡日の翌日から12月31日までのアパートの賃料について、どのように申告すべきか問題になります。
結論から申し上げますと、未分割の不動産の賃料については、法定相続分に応じてそれぞれの相続人が所得税の申告をすることになります。

相続税の対策上、不動産を買うと大きな節税になると言われています。この理由は、不動産は現金と異なり、評価をする必要があるからです。この評価とは、相続した段階の時価を計算することを言いますが、一物百価などと言われる通り、確実な時価を計算することはできません。このため、相続税の通達では、実際に取引される金額よりも低くなるような仕組みが取られており、実際のところは以下程度の金額で計算されることが通例です。
(1)土地  概ね80%
(2)建物  概ね70%
現金や預金で持っておけば、持っている金額の100%で評価されますので、評価額が下がる不動産は好都合と言われます。

相続税の節税として、必ず使われる制度の一つに、小規模宅地等の特例があります。これは、被相続人の居住用や事業用の宅地を相続し、その相続した相続人が居住の用に供した場合や事業の用に供した場合などに認められる特例です。
このような特例が認められるのは、被相続人が住んでいたり、事業として使っていたりした宅地については、相続人が引き続きこれらの用途に使うのが通例であるため、これらにまで高い税金をかけるのは妥当ではない、と考えられているからです。このため、小規模宅地等の特例を適用する場合には、相続人が居住の用に供するなど、継続的に同じ用途に使うことが前提となっています。